こんにちは。千歳烏山の歯医者、しんやデンタルクリニック千歳烏山です。

突然、口の中で「カチッ」や「ポロッ」という異音と共に、以前治療した詰め物や被せ物（銀歯、セラミック、レジンなど）が取れてしまった。鏡を見て、歯にぽっかりと穴が空いているのを発見したら、誰でも慌ててしまうでしょう。
そんな時、「痛みがないから歯医者さんにすぐ行かなくても大丈夫」「歯医者さんの予約も取りにくいからすぐに歯医者に行けない」「自分で瞬間接着剤で付け直してはダメ？」こんなことを考えることもあると思います。
この記事では、そんな時に取るべき正しい行動と、絶対にやってはいけないNG行動、そして今後の再発を防ぐための予防策について、千歳烏山にお住まいの皆さまにもわかりやすく歯科医師の視点から詳しく解説します。

1. 詰め物・被せ物が取れた！今すぐやるべき【3つの応急処置】

慌てずに、まずは以下の3つのステップを実行してください。この応急処置が、その後の治療の成功を大きく左右します。

1.1. 取れたものを確認し、清潔に保管する
絶対に捨てない！: 取れた詰め物（インレー）や被せ物（クラウン、差し歯）は、捨てずに回収してください。材質や形に問題がなければ、再利用できる可能性があります。
保管方法: ティッシュで包むと誤って捨ててしまうリスクがあるため、小さなチャック付きの袋や清潔なプラスチック容器に入れて保管し、必ず歯科医院へ持参してください。

1.2. 患部を優しく清潔に保つ
詰め物が取れた部分は、象牙質など歯のデリケートな内側の層がむき出しになっています。この部分は、外部の刺激に弱く、非常に虫歯になりやすい状態です。
食事後: 食べカスが穴に詰まらないように、水やぬるま湯で優しくうがいをしましょう。うがい薬があれば、それを使っても良いでしょう。
歯磨き: 歯ブラシでゴシゴシと強く磨くのは厳禁です。露出した部分を傷つけたり、刺激を与えて痛みが出る可能性があります。周りの歯は丁寧に磨きつつ、患部はそっと触れる程度に留め、食べカスが残らないよう注意深くケアしてください。

1.3. できるだけ早く歯科医院に連絡する
痛みがない場合でも、放置は厳禁です。すぐに歯科医院に電話で連絡を入れ、事情を伝えて予約を取りましょう。

2. 絶対にやってはいけない【NG行動】とリスク

自己判断による間違った対処は、歯をさらに悪化させ、治療を複雑にしてしまう原因となります。

詰め物が取れてしまった時にやってしまいがちな症例

歯科用のセメントと市販の接着剤は成分が全く異なります。無理に付けると、詰め物が完全に合わなくなり、隙間から細菌が侵入し、内部で急速に虫歯が進行します。また、除去が困難になり、歯を大きく削る必要が出てきます。

完全にフィットしない状態で戻すと、食事中に誤って飲み込んでしまう（誤嚥）リスクがあります。また、無理な力で歯を傷つけたり、詰め物を変形させたりすることもあります。

痛みがない場合でも、穴が空いた状態は危険です。虫歯が進行する、残っている歯が割れる、噛み合わせが変わり他の歯に負担がかかるなど、状態は悪化の一途をたどります。

患部から細菌感染を引き起こしたり、炎症や痛みの原因になります。また、歯がしみる症状を悪化させる可能性もあります。

3. なぜ詰め物・被せ物は取れてしまうのか？【再発防止の鍵】

しっかり装着しているはずなのに、なぜ詰め物が取れてしまうのだろう。一度装着したら一生取れることはないのではないのだろうか。こんな疑問を持つこともあります。

詰め物や被せ物が取れる原因は一つではありません。原因を理解し、適切な対処と予防をすることで、再発リスクを下げることができます。

3.1. 治療した歯の「二次カリエス（二次虫歯）」
詰め物が取れてしまう原因の最も多い原因は、詰め物や被せ物の下や縁の部分から再び虫歯になってしまうことです。
メカニズム: 詰め物と歯の隙間に、毎日少しずつ食べカスやプラーク（歯垢）が溜まり、細菌がセメントを溶かしたり、歯を溶かし始めます。内部の虫歯が進行し、詰め物を支えていた土台の歯が崩壊することで、取れてしまいます。
治療への影響: 取れた部分が黒くなっている場合は、二次虫歯の可能性が非常に高いです。この場合、単に付け直すのではなく、新しく進行した虫歯を削り取り、再治療が必要になります。

3.2. 接着力の低下や経年劣化
セメントの寿命: 詰め物を歯に固定している歯科用セメントも、永久的ではありません。長期間の使用により、少しずつ劣化し、接着力が弱まります。特に保険診療で使われるセメントは、自費診療のものと比較して水分に弱く、劣化しやすい傾向があります。

3.3. 噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりによる過度な負荷
強い力: 歯ぎしりや食いしばり、または治療後の噛み合わせのわずかな不調和により、特定の詰め物に異常なまでの強い力がかかり続けると、セメントが破壊され、詰め物が外れてしまうことがあります。
予防策: 歯ぎしりが原因の場合は、ナイトガード（マウスピース）の作製が有効な予防策となります。

3.4. 詰め物・被せ物自体の問題
変形・破損: 金属疲労や強い力により、詰め物自体が変形したり、ヒビが入ったりしている場合も外れやすくなります。
適合不良: 製作時に歯との間にわずかな隙間が生じていた場合、その隙間から接着剤が溶け出し、外れやすくなります。

4. 詰め物が取れてしまったときの費用は？治療方法は？

歯科医院を受診すると、外れた詰め物の状態や、歯の残っている状態によって治療法が変わります。

4.1. 詰め物を再利用できるケース
取れた詰め物に変形や破損がないこと、詰め物が取れた歯の内部に新たな虫歯の進行がないことを確認できた場合は、取れてしまった詰め物を再度利用することができます。
患部と詰め物を清掃・消毒し、新しい強力な歯科用セメントで付け直していきます。
この場合、治療時間も比較的短時間で終了し、**保険適用**となります。

4.2. 再治療が必要なケース
詰め物の下で虫歯になってしまっている場合は、取れてしまった詰め物が割ていたり、変形している場合、歯自体が大きく欠けてしまい、元の詰め物が合わなくなっている場合。これらの場合は再度治療が必要になり、取れてしまった詰め物は改めて新しい被せ物を作り直していきます。虫歯が深い場合は、神経の治療（根管治療）が必要になることもあります。

4.3. 治療の選択肢（保険診療と自費診療）
作り直しが必要になった場合、以前と同じ材質にするか、別の材質を選ぶか、選択肢があります。
保険で被せ物を作製していく場合とセラミックやジルコニアと言われる自費診療の被せ物を作製していくかどちらかの方法になります。
ここで何を選択するかによって今後の歯の将来に関わってきます。担当歯科医師としっかり相談して被せ物を選択しましょう。

5. 詰め物・被せ物が取れるのを防ぐ！日々の予防習慣

「詰めたものが取れた」というトラブルは、日々のケアで大きく予防できます。

5.1. 適切なブラッシングとデンタルフロスの徹底
詰め物と歯の境目は、プラークが残りやすく、二次虫歯の温床になりやすい場所です。
歯科衛生士に正しいブラッシング指導を教えてもらい、毎日のセルフケアに取り入れましょう。
重点磨き: 歯ブラシの毛先を、詰め物の境目に45度の角度で当て、優しく細かく振動させながら磨きましょう。磨きにくい場合はタフトブラシを使うなどして清潔にしましょう。
フロス・歯間ブラシ: 歯と歯の間の詰め物がある場合は、必ずデンタルフロスや歯間ブラシを使って、境目のプラークを毎日除去してください。デンタルフロスの通し方、歯間ブラシの適切なサイズを担当歯科衛生士から指導を受けた後、購入し、自宅でのセルフケアに取り入れましょう。

5.2. 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア
自覚症状がない段階で、詰め物の周りの小さな隙間や、初期の二次虫歯を発見することが、詰め物の脱落を未然に防ぐ最も重要な予防策です。
チェック内容: 歯科医院では、詰め物の適合状態や、セメントの劣化、噛み合わせのバランスなどを専門的な視点からチェックします。
クリーニング: 定期的なPMTC（プロによる機械的歯面清掃）は、詰め物の周りの頑固なバイオフィルム（細菌の膜）を破壊し、二次虫歯の進行を食い止めます。

5.3. 歯ぎしり・食いしばりへの対応
就寝中の歯ぎしりや、日中の食いしばりが強い方は、担当医に相談し、ナイトガードの作製を検討しましょう。歯にかかる過剰な力を分散させ、詰め物の脱落や歯の破折を防ぐことができます。

まとめ

詰め物が取れたら「焦らず、捨てずに、すぐ連絡」

詰め物や被せ物が取れることは、歯科治療を受けた方なら誰にでも起こり得るトラブルです。しかし、その後の対応次第で、治療の難易度や費用、そして歯の寿命が大きく変わってきます。

もし詰め物が取れてしまったら、以下の3点に注意してください。

千歳烏山にお住まいで、急な歯のトラブルでお困りの際は、当院までお気軽にご連絡ください。患者様の歯の状態を正確に診断し、最適な治療法をご提案いたします。